「あのさ…、迷惑だったら断ってくれて構わないから。」
「………?」
「あのさ……、アンタも大変な時期だって重々わかってるんだけど、」
「……断る。」
「まだ何も言ってないし!」
「前置きが既に面倒くさい。」
「あ~…、アンタにゃそうか。んじゃ、回りくどい言い方しないから……。私に…バスケ教えてくれない?」
「はあ?」
「………ホラぁ露骨に嫌な顔するじゃん!」
「や、そうじゃなくて。そんな簡単なこと黙ってるなんて…らしくない。」
「…え、じゃあ…。」
「別にいいけど。てか、スパルタだけどいいの?」
「やっぱ辞めます。」
「あ?」
「嘘です。お願いします。」
「……わかった。」
途端に、羅衣の表情がぱああっと明るくなる。
「…やった……!!いいの、ホントに。」
「……?何で?」
「だって、アンタだって今いっぱいいっぱいで………って、……あ……。」
「…………。やっぱ昨日…見てたんだ?」
「……ハイ…。ごめんなさい。」
「言っとくけど。アレは…アンタのせいだから。」
「………。……は?!」
「アンタがぼんやりしてるのが…悪い。」
「…………。え……?それって……。」
見てたって…そういうこと?
「…おかげで集中力散漫。」
「………。同じだ。」
「………?」
「あは、私と同じだ~、ワタリ。」
「………?何が?」
「いーの、教えな~い!」
ハテナ顔の渡と……、
満面の笑顔の…羅衣。
二人が向く方向は、いつもいつでも……
反対側。
そのことに、果して羅衣は……
気づいているのであろうか……?


