自分だってヘトヘトなはずなのに……。
「……私…、重たいよ。」
「自覚あるならダイエットしろよ。いーから、トレーニングも兼ねて。」
「………。じゃあ。…失礼しまーす。」
「うっ…。」
「…ちょっ…やっぱいいっ。」
「冗談だって。」
「………アンタはどうしてこう素直じゃないの…?」
「……お互い様。」
よいしょ、と掛け声と共に。
羅衣の身体はひょいっと浮き上がる。
「………。Bの75。」
「………?!お、降ろして、ヘンタ~イ!!」
「……痛い。」
「…だってアンタが変なこと言うから。」
「……。そうでもしないと絶対おかしいだろ、この絵ヅラ。緊張されても困るし。」
「…………!き、緊張なんて…しないよ。」
そんなことを言うから。
余計に…意識してしまう。
「…なにその掴み方。…振り落とすぞ。」
「……ヤメテ。」
「…ちゃんと掴め。」
ぎゅむっと……脇腹を摘まれる。
「…うぎゃ…!」
「………。肉厚…。そのお肉、もうちょっと胸へと…」
「バカッ!変態っ!」
じんわりと…蒸し暑さを増す初夏の夜。
羅衣は、胸の鼓動を抑えるのに必死になりながら…
渡は背中に伝わる熱を感じながら…
まっすぐ
まっすぐと……
夜道を歩いて行ったのであった。


