その日の帰り。




足の状態を見て歩けると判断した羅衣は…


後藤の申し出を断って、のろのろと…校門を出た。



決して激しい痛みではなくて。


地味に…僅かな痛みを感じる程度。






「……駄目だな…、私。」






彼女には……、最近、自覚したことがある。




それは体操部とバスケ部の体育館練習が重なる水曜日……。




彼女は、どうしても…気になってしまうのだ。




渡の名を聞く度に、


渡の姿を見る度に、



一気に目を……



奪われてしまう。








「…自業自得……、か。」




踝の痛みは、そのまま…胸の痛みと共鳴して。




ズキズキと………




その痛みを増す。













「……一ノ瀬!」









「……え?」




聞き覚えのある声に、羅衣は…振り返る。






すると……、




渡が彼女へと向かって…走ってきていた。





「ワタリ……。……何、そんなに急いで。どうした?」




「……。何って…。」




「…………?」




「…………。………乗れ。」




「…は?」



「アレは多分…痛かった。」



「………。あの……?」



「足!捻ったんだろ。」




「………ああ…。何だ、知ってたの?」



「…………。…見てた。」



「ん?」



「……見えたんだよ、コケる瞬間。」




「…………。」





なぜワタリがー…


…と、羅衣は思う。



散々罵倒されて、必死に体を張っていたはずの渡。



そんな余裕など…なかったはずなのに。




渡はしゃがみこんで…、


「……早く乗れよ。」



背中に乗るように促す。




「え…?」




「歩き方…、変。」



「………。」



「クラスマッチも高体連も近いのに…アンタはアホか。」




「………。元はと言えば、アンタの…」





『アンタのせいだ』とそう言いかけて。



羅衣は…口を接ぐんだ。




違う、そうじゃない。




そう頭で…警告する声が聞こえてきたからだった。



渡の額に滲む汗と。



わざわざ追い掛けて来たことは…、


例え口が悪かろうが、彼なりに…心配してくれたからだろう。





じんわりと…目頭が熱くなる思いであった。