サンバイザーから覗く涼しい瞳……、
リストバンドで汗を拭って、爽やかに…スマッシュを決める!
エア蒼生!!
「………いい!!王子の鉄板!!アンタなのが本当に残念だけど…間違いない!」
拳を握りしめて…羅衣は力説する。
渡は大きく息を吐いて……
「暑いのに。」
…と、一言呟いた。
「このクソ暑い日に氷点下な意見をどうも。てか…、なによその腑抜けた感じ!もっと…熱くなれよ!!!…な~んて、修造風に言わせていただきました。」
「……………。」
本日も、見事なスルーである。
「…アンタは?何に出るの?」
「うちのクラスは今日これから。うちはクラスマッチっていうと超団結するからさ、一種の祭ごとみたいなもんなんだよね。」
「………。へぇー。」
「女子の優勝は今年もいただき!」
「オメデトウ。」
「まだやってないっての。アンタもさ、ダレてないでクラスに貢献しなよね。…じゃあ、私もう行くから。またね~、ワタリ。」
渡はだまったまま…羅衣を見送る。
その直後であった。
「……蒼生。今の…誰?」
可愛く弾んだ声が……
渡を呼び止める。
「………。田之倉…。」
渡は顔色ひとつ変えずに、
彼女……、田之倉 絵美と対峙する。
「…今のコ?新しい彼女って噂のコ。確か体操部の……。」
色素の薄い…茶色の瞳。
羅衣とは対称的に…華奢な身体つき。
ネコ目とぽってりとした唇が印象的な……
かわいらしい、女……。
「…………。…そう見える?」
「さあ…。ってか、こっちが聞いてるのに。」
「…………。」
「…可愛い人だね。」
「………。そう見える?」
「狡いなぁ、相変わらず。否定も肯定もしないだなんて……。蒼生、貴方今…何を考えてるの?」
「……。さあ……。」
「妬けちゃうな、そんな事言わせちゃう彼女に……。」
「……お前の冗談はたまに冗談に聞こえない。」
二人の視線は絡まって……
絵美も、
渡も、
逸らそうとは……
しない。
「……蒼生、知ってた?私……まだ、蒼生のこと……」


