「暑い!あ~つ~い~!!」
6月……。
下敷きをうちわ代わりにしてあおぎながら……
民子はぱたり、と机へと突っ伏した。
「夏はまだだろうに…、信じらんないねぇ…。」
衣更えで半袖になった制服の袖を捲り上げているのは……。
一ノ瀬 羅衣。
体操で鍛えあげられた二の腕。
逞しい肩が、つやつやぴかぴかとしている。
「すんごい露出なのに…どうしてアンタには色気が感じられないの…?」
「余計なお世話っ。私飲み物買ってくるけど…たみちゃんは?」
「私はマイボトルあるからいらん。行ってら~。」
民子はそう言って。
けだるそうに…大あくびをした。
学食に来た羅衣は、早速自販機の前に立つ。
「……バナナンバナナンバ~ナ~……」
上機嫌で、お金を投入すると。
横からニュッと手が伸びてきて……。
ボタンを…押されてしまう。
ガコン!!
出てきたのは……、
バナナオレ!
「……も~……、ワタリ!誰もバナナオレだなんていってないじゃん!」
犯人は……渡。
「…歌ってた。」
「はあ?何言ってんの?」
「…………。」
「…無視ね。別にいーけどさあ……。」
「なんか、機嫌いい。」
「あ♪わかる~?だってもうすぐじゃん、クラスマッチ。」
「あー…。」
「…興味なさそうだね。アンタ何に出んの?バスケは駄目でしょ?」
「………。…バレー。」
「ぉお~、身長高いし、上手そうだわ。」
羅衣は…しばし想像する。
高い打点。
突き刺さるかのように鋭角な…アタック。
ラインギリギリに打たれたサーブに飛びついて、レシーブを決める……渡。
「……いい。」
「は?」
「これがアンタなのが残念だけど、……いい!」
渡は思わず……、羅衣のつるピカな肩をバシっと叩く。
「…バレーもだけど。あと……テニスも。」
「て、テニス……?」
「HRサボった日に勝手に決められてた…。」
「サボるのが悪い。…でも……、テニスかぁ……。」
彼女は再び……、妄想モードへと突入する。


