「………ん?」
いくらか時間が経った頃……、
ふと、羅衣は目を覚ました。
視界はさっきよりも…オレンジ色に帯びていて、心なしか……、肌寒かった。
「…寝て…た?」
ようやく状況を掴んだ彼女がガバリと起き上がると……。
何かが、ベンチの下へと落ちる。
「………これ……?」
はっとして……、バスケットゴールの方を見ると。
もう既に……、彼らの姿はない。
羅衣は、拾い上げたものを…
もう一度見てみる。
「………これ…、さっき……?」
渡が着ていたものに…似ている。
「もしかして…、掛けてくれたとか?……いや、ナイナイ。忘れて行ったとか……。」
でも、どちらにしたって……。
ここに来た、ということになる。
私服どころか……、
「寝顔…見られた?」
渡が置いていったシャツからは、ほんのりと汗の香り。
今日は……休日。
会う訳もないのに…、会ってしまった。
ひと言だって…話してなどいない。
だけど……、
確かに、二人は同じ時間を……共有していた。
知らず知らずの…うちに。
あたたかい、日だまりの……中で。


