すよすよと寝るその顔は……、
日だまりに温められたのか、ほんのりピンク色に染まっている。
試しに、頬を突いてみると。
「……先生…、犯人は…ジャックです……。」
むにゃむにゃと寝言を言う始末。
「……。小説バカか。」
渡はくすりと笑って……、
羅衣の足元の空いているスペースへと…腰を掛けた。
「…………。」
そこからは……、さっき自分がいた場所が…よく見える。
「……気づいて…た?」
もし、そうだったら…
彼女なら逃げていきそうなものだ。
「……………。」
渡は羅衣の小説を開いて…、彼女の寝言にあった「ジャック」という男が登場する章を…探す。
「………。………これか。」
しばらく……読み耽って。
章末に差し掛かる。
「『どうして先生は…、ジャックが騙そうとしたことに気づいたのでしょうか?』……。」
羅衣の寝顔を……
チラっと見る。
「………。騙す……、ね。」
渡の手が……
羅衣の頭へとのびるが。
それは…
彼女に触れることはなく、だらんと…下ろされるだけだった。


