本屋を出た羅衣は、街中をブラブラして……
ある場所へと、訪れる。
沢山の木に囲まれた……
公園。
一番端のベンチに腰を下ろすと……。
羅衣は、早速買ってきた小説を袋から取り出して……
読み始める。
そよそよと…風が吹き抜けて。
ざわつく木々の間から、やわらかい木漏れ日が…降り注いでいた。
羅衣の目の前を、高校生のカップルだったり、親子連れだったり、自転車だったり…
色々な人が通過していくけれど。
彼女は全く気にも留めることなく…小説の世界へと浸かり始める。
やがて、公園に併設されたテニスコートから…
ラリーする音が、耳に届いてくる。
一定に続くその音が…
心地好く感じた。
さわさわ…
さわさわ………
沢山の、癒しの音色の中で………。
ふと……、
羅衣の胸に、響いてくる音があった。
ダム…
ダム………
「……………。」
よく聞く…音だ。
ダム…
ダム………
「…………。」
ふと………顔を上げて。
音がする方向へと…目をやる。
「………ん……?!」
少し離れた所に設置された…バスケットゴール。
そこで、黙々と…
まるでボールを支配するかのように、ドリブルしたり、シュートをしたり……
夢中になって遊ぶ…男がいた。
その傍らには、小学生くらいの…少年。ボールを取ろうと、必死に食らい付いては…何度も、手をのばしている。
「………!げっ……!ワタリ……?!」
その男が、渡であると気づいた途端に……、羅衣は、本で顔を隠した。
「な…、なんでこんな所でも……。」
ちらり、と彼の方を見る。
「……………。」
随分と……無邪気に笑っている。
「少年に対して大人げないなあ……。」
でも、心底…楽しんでいるようにも見える。
「……どっちが…子供なんだか。」
全くもって…羅衣の存在には気づかない。
彼女は安堵の息をついて、ふわり…とひとつ笑みを零すと……。
また、本へと…視線を落とした。
ぽかぽかとあったかい……、
そんな……不思議な温もりが、そこにはあった。


