「……しばらく…、服も買ってないな…。」
パタリと雑誌を閉じて…。
今度こそ、とレジへと向かおうとする。
……が、
その道中で……、
立ち読みをする者の中に、一際目立った男が…、視界に入ってきた。
「………ワタリ……。」
何でここにいるのかと考える、それよりも早く……
反射的に、体を翻す。
そう……、
今日は休日。
ましてや、制服でも、ジャージでも……ナイ。
近所に出掛けるような…ラフな格好を、見られたくなど…ない。
羅衣は、本棚に身を隠して……
そうっと様子を隠れ見る。
「……私服まで抜かりないとは…、嫌味か。」
それこそ、そこにある雑誌から飛び出して来たかのような…風貌。
王子は何を着ても…、サマになってしまうらしい。
羅衣が次に気になったのは……
彼の手元。
エロ雑誌を読んでるのかと思いきや……
「………。休みの日も…バスケ…?」
持っているのは、月刊で発行されている…バスケットボールマガジン。
「………バスケ馬鹿なのかな……?」
声を掛けようか……、
いや、掛けるにもどんなスタンスで対応すればいいかなんて…わからない。
決して。
仲良しこよしなワケではありませんから………。
しばらくウロウロしながら、迷いに迷い……
結果、本棚の裏側に回って。
レジへと……向かう。
「あんな小洒落た奴の隣りには…並べないな。」
少しだけ、惨めになった気がした。


