以前の自分であったら。
もしかしたら…興味もあったのかもしれない。
流行りのものを身に纏い、女の子達と…ああだこうだと話題にしていたかもしれない。
だけど……、
そんなことは、とうにやめた。
自分を磨くようなことも、女子力を高めるようなことも……
必要などなかったから。
「………………。」
ファッション誌の中で、笑顔を振り撒くモデル達が…キラキラして見える。
卑屈になるには…、十分な理由だった。
「………はあ……。」
ため息も…ポロリ。
「……………。」
そんな、羅衣の姿を……
ぼんやりと見つめる、もうひとつの瞳があった。
渡…蒼生である。
彼もまた、今日は…部活もなく、暇を持て余していた。
ふらりと立ち寄った本屋。
そこで、雑誌を立ち読みしていた所…
たまたま、彼女を見つけてしまった。
彼女が手にしているのは…ファッション雑誌。
しかも、浮かない顔で…見ている。
なんとなく…声を掛けずに、雑誌を見ながら…
…様子を窺っていたのだ。


