3年2組。
そう…表示された教室へと、とぼとぼと入って行った羅衣の元に、真っ先に駆け寄って来たのは…
「羅衣、どうだった…?!」
サラリと前髪を掻き分けて、くりくりの大きく潤んだ瞳をもつ美少女……、
「…タミちゃん。」
中村 民子。
羅衣が呼んだその声に、民子は途端に目をキッと吊り上げて…。
「その名前で呼ぶな。」
…と、一喝した。
「…ああ、ゴメン。昔の癖がつい。」
覇気なく答えて、羅衣はさっさと自分の席に戻ると……
鞄の中から小説を取り出して、頬杖をつきながら…じっとそれに見入ってしまった。
「……没収。」
ひょいっとそれを持ち上げて、民子が彼女を見下ろす。
「何すんのよ。」
羅衣は負けじと睨み返す。
「……報告は?」
「……………。」
「…言ってくれたんじゃないの?」
「……………………。」
「……なによ、その腑抜けた顔。」
「……ああ…。まあ、会えたには会えた。」
「…で、で…?!」
わくわくと身を乗り出す民子とは対称的に、羅衣の表情は浮かない。
なんともキマリの悪い顔をして。
恐る恐る視線だけを民子へと移して。
「…やってしまった…。」
顔を…思い切り赤面させた。
「……え…?なに…、アンタ渡くんと何か…?」
「…………。初体験だよ……。」
「…はあ?!まさか…、」
「……むにゅっとね。」
「……まさか、キ…、キス…?!」
「や。それどころか…」
「なによ……、ちょっと、羅衣…?」
羅衣は民子の顔を引き寄せて、耳元に…呟く。
「は、………はああ~ッ?!!!」
教室が……揺れるほどの響き。
そこにいた生徒達の視線が一気に彼女らへと集中したことは…
言うまでもない。


