彼女が誘われるかのようにして、まずやって来たのは……
大型の本屋。
背丈の高い本棚に、沢山の作家の名前が…表示されている。
まずは平積みになった本を手にとって……、
冒頭部分を読んでみる。
それから、本屋オリジナルのポップに目を通して……
「…ふぅ~ん…。」
パラパラと…ページをめくっていく。
これを繰り返すだけでも……、
羅衣は一日中でも、ここに居れる。
彼女にとってこの場所は……
宝物の宝庫と言っても、過言ではない。
「……そういえば……。」
彼女は場所を移動して、ミステリー小説のコーナーへと…やって来た。
しばらく、キョロキョロと視線を移動させて……。
「…あった!」
お目当ての小説を…抜き取る。
「『先生』、お会いしたかったです。」
それは……、そう、
羅衣の愛読書の…新刊。
今すぐにでも読みたい、という衝動に駈られながらも…、
何とか抑えて、レジへと向かう。
その……、途中。
レジに極めて近いコーナーに。
若者が…何人か立ち読みする姿が見えた。
ファッション誌や月刊誌など、いわゆる雑誌が並ぶ…コーナーだ。
『かわいーから。』
ふと……、渡の声が蘇る。
羅衣は…
自分の服装をチェックし、それから…立ち読みする若い女の子と見比べる。
「……。かわいいって…あーゆー子を言うんだよね。」
ふわふわとした…女の子らしいガーリー系。
一方の羅衣は、と言うと……。
カーキのカーゴパンツに、丸襟をあしらったオフホワイトの…シャツ。
足元に至っては……適当に履いて来たローヒールのサンダル。
「…………。」
自分に似合っているとは自負しているものの…、決してお洒落ではない。
「………。」
後ろ髪がひかれる…気がした。
徐に、そちらへと歩みを進め。
その女性が読んでいる雑誌と同じものを…手に取る。
「…………。可愛いなあ…。」
つい、ポロっと…
そんな言葉が零れた。


