………が。
「一ノ瀬羅衣、いる?」
数日後……。
羅衣はしばし後悔し始める。
「………ん~?」
教室で…席に座っていた彼女が、くるりと振り返ると。
「…ぎょえっ?!」
ずかずかと教室に入ってくる…ワタリ!
「…………。」
呆気にとられる羅衣。
「……。この前の釣り、多かったんだけど。」
ワタリは空いていた彼女の前の席へとドカリと座り……
こともあろうに、顔を覗きこんできた。
「……ど…、どちら様でしょう?」
「は?」
「誰かと勘違いなさっていませんか?」
「………。一ノ瀬羅衣に用があって来たんだけど。」
「……………。」
空気に耐えられなくなった彼女は、すっくと立ち上がり……
「……渡クン、ちょっと…。」
半切れ状態で……
渡を廊下へと引っ張っていく。
「………ちょっと…!何堂々と入ってきてるのよ!時と場合を考えて!アンタは王子…、私は一般女子なんだからっ。」
「……何その王子とかって。サムイ……。」
「え~い、面倒くさい!だから、ここまで堂々と来られたら迷…」
「迷惑なんだ?」
「え、いや……。」
「迷惑、なんだ?」
「~……違うけど…、目立つ!!」
「……?アンタ初めっから目立ってんじゃん。」
「はあ?!」
「……目立ってた。」
「………え…?」
「ガサツな女がいるなあって。」
「………。あっそ。」
「嘘。かわいーから。」
「…はいはい、わかりましたよワタリくん。もういいから。」
「………。…うん、嘘だけど。」
「…………。アンタねぇ…、ほんっと何しに来たワケ?!」
「…だから…、アンタ俺に千円よこしただろ?しかも…小銭で。」
「………。何のこと?」
「釣りになってないし。」
「………数え間違いじゃないの?」
「……。……そう言うと思った。だから…、コレ。」
渡りは制服のポケットから……
紙パックのバナナ牛乳を…取り出す。
「………?私に?」
「そう。」


