「電信柱の陰から、小説が見えたから…アンタかなって。だから…反対側から回って変態を監視してみた。」
「…………。…トーマスじゃないんだから。覗きこむなんて…卑怯だよ。」
「アンタこそ、ストーカー向いてないんじゃない?そんなんじゃすぐ見つかって訴えられる。」
「………。失礼ね。探偵と呼んで。」
「有り得ない……。」
「うるさいな。……あ、やば……!」
「……?ナニ?」
「アンタが今日ゆっくり来るから…遅刻しちゃう!」
「…ハ?待ってろなんて頼んでな……」
「いーから!!急がないと遅刻するよ…、ワタリ!」
「…………。」
羅衣は渡の方へと振り返りながら…、先を走っていく。
「……急げ~っ!!」
ニカっと笑顔を向ける彼女に。
渡もつられて…少し笑う。
「…お。笑った~!」
「…は?何だそれ。」
「冷血漢って言ったの…取り消してあげるっ。」
「…………。俺はアンタの『変態』、取り消さないけど。」
「チッ…、駄目かぁ…。」
二人は学校に向かって走りながら。
そんな…憎まれ口を叩き合っていた。
この日は……、
仲良く(?)遅刻。
もちろん噂は流れに流れまくったけど……
羅衣はもう、気になどしなかった。
なぜならー……
ミステリー小説と同じ。
真実はちゃんと…
暴かれていくのだから。


