マットを一直線に並べた後。
3年が先頭に立って…
短い助走をつけた後に、前方転回を行っていく。
横で見学する1年生から…拍手が起きていた。
羅衣はおまけにもうひと技。前方宙返りを…加える。
すると、何故かバスケ部のコートの方からも…どよっと歓声が上がった。
次は後方転回。
それには…、助走をつけた後に、ロンダートという技を挟まなければならない。
側転のように一直線上に手をついて、身体を180度捻りながら両足で着地をする技だ。
羅衣の順番が回って来て。
彼女が走り出した瞬間に……
「……うわっ…と…。」
少し先で……
バスケボールがマットの上を転がって来るのが…見えた。
ブレーキをかけて立ち止まるつもりが、
勢い余って…すってんころりん!
そんな羅衣の前を…
「スミマセン。」
何者かが…横切る。
その人物は、ボールをいとも簡単に…片手で拾い上げた。
大きな手に
まるで、吸い付けるかのようにして。
やがて、彼女の目の前に……
その人物がやって来る。
大きな背丈。
ふわふわと揺れる…黒髪。
羅衣は寝転んだまま、
……顔を…見上げる。
「…アンタよくコケるな。」
「……!……ワタリ…。」
「体操部だったんだ?……目立ってんじゃん。」
「…アンタこそバスケ部だったなんて。おかげでギャラリーうるさいんだけど。」
「つか、それはアンタのせいでもあるし。」
「…はあ?」
ワタリは手を伸ばすと…、
ひょいっと羅衣の身体を持ち上げる。
「…小さいのに重……。」
「………?!」
「こっちの観客奪ったのと、強烈キックお見舞いされた……仕返し。」
渡はニヤリと笑って。
じたばたする彼女をマットの上に…下ろす。
「……な…、なな……!」
一方の羅衣は、完全に錯乱状態。
言葉が…出ない。
「……楽しくなりそーじゃん、色々と。」
「………?」
「じゃあ、練習ガンバッテ。」
「……………。」


