マットの上で、女子体操部の面々は…いつもより念入りに、柔軟をしていた。
なぜなら……、
本日より、仮入部が始まって、思いの他沢山の1年生が…こちら体操部に、集まっていたから。
「……すっげー。羅衣効果?」
「…ふふ、まあね~。」
羅衣の背中を押す、部員のマキが…ほくほく顔で、一年生を眺める。
「痛い。痛いって…マキちゃん。気合い入りすぎ。」
「ああ、ごめん。つい……。」
羅衣も…まんざらでもない様子。
その1年生達は、2年生と二人一組になって……。
身体をぷるぷるとさせながら、同じ柔軟体操に挑戦していた。
「懐かしいな。私にもあんな時期あったっけ。」
マットに腹をべったりとつけながら…彼女はクスクスと笑う。
「…ってか、アンタは無謀だったよね。」
「…ん~?」
「初日から先輩たちにまざってバク転しようとしてたじゃん。」
「そうだっけ?」
「うん。調子に乗って補助外してもらって…。思いきりコケてたじゃん。」
「………。そういうことばっか覚えてるのね。」
「まあね~。」
今度は、股割りをして……、
ちょうど、ハーフコートの反対側へと…体を向ける。
「…………。つーか…、アッチも凄いね。」
「……ん?」
反対側のコートは…、ギャラリーまでもが人だかり。
「……アッチは渡効果かぁ…。」
マキのぼやきに、ついつい羅衣は…反応する。
「………。ワタリ…?」
そこで部活をするのは…男子バスケ部。
「ワタリってそこまで人気ある訳?」
確かにバスケをする姿は、一目をひいてはいたけれど……。
「…え。今更?」
「…………。」
本日2度目の『今更』。
「去年だって凄かったじゃん。今日みたいに人だかりができて……。」
「……ああ、そういえば。」
「渡がいるからだよ。」
「……え~?」
「でも…、日に日に人数減ったよね。」
「……。」


