手にしたペットボトルを握りしめて。
羅衣は再び保健室へと…戻って来た。
養護教諭は…いない。
「……たーみちゃんっ。」
呼びかけるようにして、カーテンを開くと。
そこには、ベッドの上ですよすよと気持ち良さそうな寝息を立てて眠る…
民子がいた。
「……そっか…、寝不足……。」
彼女はそっと…顔の脇へとペットボトルを置いた。
「……うひゃっ!」
寝返りを打とうとした民子の頬に…それが当たる。
「……羅衣!も~…びっくりさせないでよ~。」
「あはは、ごめんごめん。」
民子はペットボトルを手に取ると。
ソレと羅衣の顔とを…見比べる。
「………。羅衣、…わざわざ買ってきてくれたの?」
「うん。………あ…。」
「………?」
上体を起こした民子が…蓋を開ける。
「…いただきまー……」
「……ごめん、ソレ『渡蒼生』から。」
ブーッ!!
……と、口に含んだ飲み物を、民子が吹き出す!
「……た…、タミちゃん……?」
お約束のようにして……。
羅衣の顔から、ぽたぽたと雫が…垂れ落ちる。
「………。な、なな、なんで彼が……?!」
「…………。…買いに行ったらお金が足りなくて、そしたら偶然居合わせた渡が『お詫びに』って。」
「……は?何ソレ?」
「……ね。…ホント…何なの、アイツ……。」
首を捻って考えるけれど。
これは…あの男の気まぐれなのか?
けれど。
保健室にいるのが民子だとは…ひと言も言った覚えはない。
ましてや、詫びる理由があると言うなれば……
その理由は……
ひとつ。
たみちゃんの告白に対しての……、謝罪?
「……なんなの…、ホント。」


