手に財布を抱えた羅衣は…、
何やら上機嫌で、さっき通りかかった場所へと戻ってきた。
「……。塩分補給ときたら……。」…と、そう呟いて。
学食の中を、ひょいっと覗きこむ。
「……。ヨシ、誰もいないな……。」
昼が過ぎた学食には、ガランとして人っ子ひとりといない。
羅衣はこっそりと忍び込んで……
自販機の前までやってきた。
「……。ポ〇リにDAK〇RA……。」
キョロキョロと商品を見比べながら、財布の中からお金を取り出すけれど……。
ちゃりん……
「……あ。」
手元から…ひとつ、お金が滑り落ちてしまう。
コロコロと…面白いくらいに転がっていくソレは。
「……うげっ。」
こともあろうに、自販機の下へと…入り込む。
「…………。」
…が…、
ここで怯まないのが一ノ瀬羅衣。
辺りに誰もいないことをいいことに、
ピタリと床に這いつくばって……
10円玉を取る為に、必死に…手を伸ばす!
「……やった…、取れ…た。」
……と、
喜んだのも…つかの間。
「………。ピンク。」
「………ハ…?」
背後から突然降ってわいてきた男の声に…。
思わずそのまま、フリーズする。
恐る恐る振り返ったそこには……。
「………!渡…蒼生。」
こともあろうに、彼女をじっと見下ろす渡と、その友人の…姿。
「………。…何よ…、何か用?」
「…………。邪魔。」
「はあ?!」
「コーラ買いたいんだけど。」
「…………。あ…、ああ…。」
羅衣はのそのそと立ち上がり、その場所を…渡へと譲る。
「………。こびと図鑑。」
「………?」
「そーゆーの載ってる。」
「………?!」
渡が……羅衣を指差す。
すると…、それを聞いた友人らが、途端にゲラゲラと笑い出した。
「ワタリ~、そりゃ可哀相だろ~。」
「…………?」
全く状況を理解してはいない羅衣に。
「……スカート。めくれてる。」
トドメの………
ひと言。


