一度崩れたプライドは、そうも簡単にとり戻せる訳もなく……。
ましてや、その方法も…既に解らなくなっていた。
全くの……めちゃくちゃだ。
「……惑わしてるのは……どっちだよ。」
渡の背中がつぶやいて。
それから……
くるり、と彼女へと…向き直す。
一歩一歩、近づいて……。
目元を隠す羅衣の腕を、ぐっと…掴んだ。
「……離して。」
「嫌だ。」
「…離して!」
「嫌だ。だったら…泣くな。惑わせるくらいなら…やめろよ。……見てみたくなるじゃん。」
彼女の腕が緩んだ隙に……
渡は、強引に引き離し、その代わりに……
彼女の顔へと、
「わぷっ……!」
タオルを……押し当てる。
手にした紙袋を地面に置いて、
羅衣の涙を拭いて。
それから……
タオルを、頭に覆うようにして…被せてやった。
その両端を、渡が握って……。
現わになった彼女の顔を……
覗きこむ。
「……止めらんないんだよ、アンタといると。アンタはきっと…タカハシを選ぶ。そう思ってたから……歯止めをきかせてた。」
ぐいっとタオルを引かれて。
二人の顔が…一段と、近くなる。
「初めから、アンタを友達だなんて…見れなかった。今も、俺にそんな顔見せて……どうしたいの?止めてやれないけど。」
「……何よ…、それ。」
「よく考えろよ。アンタは今……、俺の手の内にいる。逃げようと思ったら…前みたいにケリ入れてでも逃げられるだろ。なのに…それをしない。」
「…………。」
「どういうことか、教えて。でないと…、解放しない。」
「………ひど……。」
渡は……妖艶な顔つきで、微笑む。
「掛かったアンタが悪い。なんの為に…避けてたんだと思ってんの。」
「……はい?」
「そしたら…、アンタはきっと、またこうやって…物申しに来るんじゃないかって思った。腑に落ちないことは…スッキリさせたいタチだろ?」
「…………!!」
「案の定、来たし。けどまさか……家まで来るとは思わなかったけど。」
「……………。」


