「…マジか!かなり今更だな。」
「……ホントだね。」
二人は顔を見合わせて…、くすりと笑った。
「……。……あ。俺の携帯、充電あんまりないな。」
高梁は…携帯の画面を見ながら、ぽつりと呟く。
「ごめん、ちょっと電源切っておくね。今番号言うから登録しといてくれる?」
「ん、わかった。」
羅衣はポケットから携帯を取り出して……、高梁に言われた番号を打ち込む。
「俺、後で登録しとくね。」
「ん。わかった。」
「てか…、いつ行くの?」
「部活の…時間かな。」
「いいの?大事な時期なのに。」
「………。集中できないままじゃあ…、どの道、駄目だよ。一瞬の隙が…怪我に繋がるってわかってる。それがきっと…解消できると思うんだ。ちゃんと気持ちをぶつけると…、スッキリするんでしょう?」
「………。…まあね。」
「私も、高梁くんみたいに…、一度くらいは素直に…、真っ向から勝負に挑んでみたい。」
「………うん、そっか。健闘を…祈ってるよ。」
「あ、でも…。部活中じゃあ電話はできないね。」
「それなら大丈夫。今日、監督…M大学に練習試合の依頼に行くから…、ちょっと遅れてくるって言ってたし。だから、何とでもなるから。」
「でも……」
「つか、絶対連絡してよ?俺、待ってるし。」
「うん……、わかった。」
「………。応援はできないけど、見届けるくらいは…させて。」
「……うん。高梁くん、あの……」
「ん?」
「ありがとう。」
「いいって。だって別に…上手く行って欲しい訳じゃないし。」
「…それでも。…ありがとう。」
羅衣は高梁に、頭を下げて…、それから、顔をあげると。
最高の笑顔で…笑いかけた。
「…………。」
高梁もまた、彼女につられたかのように…
穏やかに、微笑む。
踵を返して、一歩踏み出す彼女が…見えなくなるその時まで。
高梁は、片時も目を離さずに……
じっとその背中を…見守っていた。
「………まあ…、こんくらいの意地悪は許してよね。」
彼はポケットの中から…携帯を取り出す。
その、電源は……
切れてなど…いない。


