TRAP!~GREEN DAYS~





「…どうして…?」


「羅衣が変態だなんて噂…有り得ないのに。」


「…………。」



「言った奴全員ボコる。」




「……………。」


渡が言っているなどとは口が裂けても言えない。


どんなにムカつく相手でも、渡蒼生は彼女の想い人。これ以上幻滅させまいと…ちゃんと自制心が働いていた。




「……羅衣が中学ん時の二の舞になるんじゃないかって…心配した。私なんかの為に余計な行動とったんだろうなって……。」




「…たみちゃん。…大丈夫。男にドン引きされるくらいなら可愛いもんだよ。今は…、たみちゃんはいるし、周りの女の子達も優しいし、何にも心配ないよ?」



「……そう?」



「ん。そう!」




ようやく顔に笑顔が戻った民子は…


少しだけ、バツが悪そうに言葉を続けた。




「……羅衣。私もそうなんだけど……、別に渡を恨んでるとかそういうのはないからね。」



「…え。」



それは正直…意外である。




「確かに一方的な振られ方はしたけど、今朝挨拶したらちゃんと返してくれたし、他に振られた女の子達も口を揃えて言うよ?彼は『優しい』って。」



「……はあ…?」



羅衣にとっては、どこが?とツッコミたくなる所だ。



「…素っ気ないけど、完全に相手にしない訳じゃない。話し掛ければ答えてくれるし、色目つかわなきゃごく普通に話掛けてもくる。あとは……」



「……たみちゃん。自分を振った男を庇うなんて、らしくないよ。」



羅衣は……困惑していた。


責められるべき相手だと思っていた渡が…、民子はおろか、他の人達にも…擁護されているのだから。


それに。



彼女は今朝一方的にまくし立てただけであって……、



彼はちゃんと話も聞いたし、答えもした。



羅衣に対しての失礼な物言いは、解せないけれど……。



「…だから…、それが王子と呼ばれている理由じゃないかな。『罪を憎んで人憎まず』。悔しいけど…、やっぱカッコイイもん。」


「………。さいですか……。」






幸せそうに微笑む民子に、羅衣の心は幾分か複雑であった。



散々罵ってやったのは…間違いだったのではないか、と。



否定も肯定もせずにただ黙って非難を浴びてられていたことに…



昔の自分を…重ねていた。



本性も知らない癖に。

傷つけたのかもしれない。