「でも、今は……どこかで、信じたいとも…思える。少しでも望みがあるなら、その可能性に…賭けてみたい。………ワタリが……好きだから。」
「………。あ~あ…、言っちゃった。」
「え……。」
「一ノ瀬は、強情だから…認めないかなって思った。だったらまだ…付け込む隙もあったのに。」
「…………。」
「今のは……、俺の、最後の賭け。僅かな望みに…賭けたつもりだった。」
「…………。」
「……ねえ、一ノ瀬がしようとしてることって…、これと同じことなんだよ。俺達は…考えることも似てるし、気だって合う。きっと喧嘩にもならないし……、上手くやっていける。そう…思わない?」
「……思うよ。きっと楽しいし…、話す度に、私は癒える。」
「………。うん…、それでも、ワタリなんだ…?」
「……。…うん。」
「なら、もし…俺の方が一ノ瀬と先に知り合って、仲良くなってたら…答えは違った……?」
羅衣は、ギュッと拳を握って……。
小さく首を振った。
心が……痛かった。
泣きたく…なった。
「どっちが先とか、出会い方とか、…関係…なかったんだと思う。きっと私は……、ワタリに出会ってしまったら、やっぱりアイツを…好きになってた。ムカつくことばかりだと思うけど、目が…離せなくなる。」
「……。駄目押し、か……。」
「ごめん。」
「…うん、けど、まあ……、清々しいもんだね。これだけハッキリ言われると…、自然とすっきりするんだ?」
「…………。」
「だからきっと…、一ノ瀬も、そうなるのかな。」
「………。」
「ねえ、もし振られたら…、また、俺に逃げてきてよ。アイツを好きなままでいいから…。」
「……それは…、ない。私も、多分…、諦めが悪いから。しばらくきっと…ワタリを好きでいる。友達でいいから…近くにいたい。」
「とことん、似てるよな……、俺ら。」
高梁はふと笑って……。
ゆっくりと、手を伸ばした。
ぽん、ぽん…と、2回。
羅衣の頭に触れて、
その手を、今度は自分の制服のポケットへと…入れる。
「……ほら、コレ。」


