悲しそうな、何かに縋るような瞳で…
高梁は、羅衣を見つめていた。
「諦め悪いから…、ハッキリ言って。俺じゃ駄目だって理由も。納得させてみろよ。」
「……………。」
この言葉を言ってしまえば……、
この先、自分でどうしたらいいのか。
路頭に迷うのではないかと……思った。
高梁のことは……、嫌いじゃない。
好きか嫌いかと問われれば、間違いなく…好きな人には違いない。けれど、それは…
彼の人柄だったり、素直さだったり、人として尊敬もできる人物として……
憧れに、極めて近い物であった。
想いをぶつけてくれた高梁に対して、
それ以上の感情を持てないと言うのなら……
確かに、これ以上引き延ばすのは…酷である。
「…………ごめん。高梁くんの気持ち、知ってる癖に……。なのに、いつまでもその優しさに…甘えてた。高梁くんのこと、知ってみたいと思ったのは、嘘じゃない。でも…、でも……、もっと、知りたい人がいる。」
「………。うん、それで?」
「……私は…、渡蒼生を知りたい。あの人の、腹の内を…全部知ってしまいたい。あの人の目に……まだ、私は映っているのか、まだ、声は届くのか……。」
「うん……、だから、つまり…?」
高梁の瞳は……あの時と同じ。
体育館で、羅衣を見つけてくれたあの時と…
何ら、変わっていない。
真っ直ぐで、揺るぎがなくて、
彼女の心に……
ほんのりと明かりを燈す。
彼がいなければ。
きっと……気づかなかったであろうこの気持ち。
羅衣の足元を……照らしてくれる。
そんな……光のような存在だった。
初めの出会いなどは…関係ない。
お互いに傷ついたことも、何もかも含めて……
出会えて良かったと、心から…思える。
「……前に……、高梁くん言ったよね。努力して…自分に自信がついたら、戦いの舞台に…立てるって。あの言葉に背中押されて、前を見たつもりだったのに。突き付けられた現実に向き合えなくて…顔を背けた。今も、自信は…ない。でも、努力すら…していなかった。舞台に上がるどころか、先に降りてしまった。」
「…………。」


