高梁の言うそこは…、
以前に、渡と会った公園であった。
羅衣の家とは……
反対方向。
ならば、あの時……
傘を貸してくれた渡は、一体何故その場にいたのでいうのだろう。
「……………。」
紙袋が……くしゃりと音を立てていた。
「……一ノ瀬…?どうしたの?」
「………あの……」
「ん?」
高梁を目の前に。
こんなことを問うのは…どうかとも思った。
けれど……、まるで羅衣の心情を紐解くようにして…
「……ワタリに…会いたいの?」
あまりにも真っ直ぐに言葉を投げかけてくるから。
もう、隠し通せないとも……思っていた。
この、溢れ出す感情は……
嘘偽りのないもの。
「……うん。」
彼女は…首を縦に振る。
「知ってるなら…ワタリの家を教えて欲しい。どうしても、伝えたいことが…。」
「…………。いいよ。……なんて……、俺が言えると思う?」
「…………!」
「結構…、酷だよね。俺は一ノ瀬が好きだって言ってるのに……、アイツんとこに行こうとするのを…見逃すと思うの?」
「……………。」
高梁の表情から……、ふと、笑みが消える。
「それに、今は大会前の…大事な時期だろ?こんな時に具合悪くなるようじゃ駄目だろ。体調管理もできないんじゃ…、運動する人にとっちゃあ致命的。…わざわざ見舞って一ノ瀬が風邪うつったりなんかしたら…どうすんの?」
高梁の言うことは最もで……。
いちいちグサリ、と痛い所を突かれているようだった。
「……ワタリが風邪ひいたんだとしたら……、私のせい。責められるべきは……私。」
「………え……?」
「体調管理がなっていないっていうなら…私も同じ。」
「……どういうこと?」
「……ごめん。」
「…………?一ノ瀬…?」
「高梁くん、ごめん。」
「…………。」
「どうしても、行きたい。だから…教えて下さい。」
「…………。なら…、はっきり言ってよ。一ノ瀬…、俺、そこまでお人よしじゃない。返事も貰えないまま…、中途半端に期待持たせられても…困る。正直、辛い。」


