「……へ……っくし!」
「加藤茶が此処にいる……。」
朝から、羅衣はくしゃみを…繰り返していた。
「風邪でもひいた?」
民子が不思議そうにして…首を傾げる。
「昨日結構雨に打たれたから………。………っくし!」
「あはは、コントみたい。傘持ってなかったの?昨日大雨注意報出てたのに……。」
「…………。傘……、途中で借りたんだけどね。……ねえ、たみちゃん…」
「……?なに……?」
「そろそろ…わたしの想像力……、キャパ超え。」
「……は?」
「話……、聞いて貰っていい?」
「………ん。聞いてやろうじゃない。」
羅衣の真剣な面持ちに…、民子はつい、机に身を乗り出す。
羅衣は頼られることはあっても……、あまり、人を頼ることはしない。
長年の付き合いであるから、民子はそれを十分わかっていた。
だから……
嬉しくもあり、それから…心配でもある。
大方の検討はついていても。
羅衣の口から語られるまでは……
彼との約束通り、手出し無用だと…弁えていた。
「………。あのさ、口も利かない、目も合わせない。なのに……その人は困ってるその時に、助けようとする。その心は?」
「…………。もしかして。傘貸してくれたのって…渡くん?」
羅衣は黙ったまま…頷く。
「いつも…そうなんだよね。こっちの都合とか一切関係なしで、放っておいてくれればいいのに……。………助けられる。ここぞっていう時に、いつもいつも…………。」
「……………。」
「アイツの腹の内、一体どうなってるんだろう……。」
「………。気になる?」
「…………。」
「羅衣、気になるの?」
「……………。……わからない。ただ、ハッキリして欲しい。中途半端は…一番嫌だ。」
「そう思うなら…、迷うことないんじゃない?」
「え?」
「羅衣さ、前に私の為に…してくれたじゃない?」
「………?」
「渡くんに…、説教。…てか、痴女行為?」
「あれは…腑に落ちなかったから……。」
「同じことじゃん。腑に落ちないから、わからないから、私に相談してるんでしょう?あの時のウチらの…逆。」
「…………。」


