その日……。
「………。すっごい雨…。さっきまで降ってなかったのに。」
帰りに羅衣を待っていたのは、まさに…ゲリラ豪雨。
降りしきる雨がアスファルトを弾いて……
羅衣が立つ屋根下までをも容赦なく濡らしていた。
「…………。……どうすんの、コレ……。」
運悪く…。
渡り廊下での部活を終えた彼女は、顧問の後藤と高体連の打ち合わせを一人行っていて……、
マキを初め、他の体操部員は既に帰宅してしまっていた。
梅雨明けしていないこともあり、ここのところ…確かに不安定な天候が続いていた。
天気予報をチェックするようなこともなければ…
傘を常備するようなこともなく。
自分のズボラさに…いい加減、げんなりした。
「コンビニまで……、ダッシュするか。」
意を決して。
雨の中へと…飛び込む。
その第一歩は…
びしゃりと水溜まりへと入っていって。
靴も、靴下までも…
一瞬にして濡らしてしまった。
空は厚い灰色の雲を帯び……、いつもよりも、視界を暗くする。
ろくに前も見ず、顔を下げて…とにかく、無我夢中で走った。
頭上ではゴロゴロと小さく雷鳴が轟き……
羅衣が胸に飼っている、もやもやとした感情を……増殖させていく。
不安を……
せき立てる。


