「貧血ね。まあ…少し休めば大丈夫でしょ。」
養護教諭にそう言われて…、羅衣は安堵の息をついた。
「……ごめん、羅衣。今朝朝食抜いたから…。」
ベッドに横たわる民子は、申し訳なさそうに……
口元まで布団で隠して、小さく呟いた。
「先生は授業へ戻ってください」と、促されて…、連れ添った体育教師は、ぺこりと頭を下げる。
「民子~、ゆっくり休めよ。それから一ノ瀬、お前も戻るぞ。」
「あ。すみません、ちょっとだけ話してからでもいいですか?」
体育教師が保健室を去っていくのを見守って。
それよりも、と…羅衣は彼女を覗きこむ。
顔色を確認すると……
ゆっくりと、穏やかな口調で…話し始めた。
「……さっき…、何言いかけたの?」
「………。うん。さっきグランド走る前に、アンタの噂聞いてさ。」
「………!どんなの?それ。」
「なんかよく解らないんだけど、アンタが変態だって話と…、アンタが渡に告白したって話と…、私が渡に振られたって話。交錯しすぎて訳わかんない噂だったけど……。」
「…たみちゃん。ソレね、2/3は…当たってる。」
「…え…?!羅衣、アンタ渡のこと好きだったの…?」
「………。おっと、一番有り得ない所を信じたもんだね。」
「……。じゃあ…、違う?」
「…ん。渡はたみちゃんの好きな人でしょう?わざわざ好きになる理由はないよ。」
「……なら……」
「…残りの二つ。それは…きっと今朝の話だね。」
「…まさかアンタ…。」
「はい。」
「渡にまた何かした……?」


