「キャ~、羅衣、か~こい~っっ!」
体育館……。
コートの外では、女子の黄色い声が…飛び交っていた。
とりわけ目立って叫んでいるのは……
中村民子。
周囲の男子の視線を…ますます独り占めしている。
その一方で……
コートの中では、ちょこまかと動き回る人物が……。
バスケットボールを支配し、波に乗っている…
羅衣である。
「左手は…遊ばないでガード。」
高梁に教えて貰った技術を駆使して……
ディフェンスを、くぐり抜ける。
練習で最もシュート率の良かった、ゴールから斜め45度付近でシュートを放つ。
「よっしゃ~!!」
鮮やかに…ゴールが決まる。
「いーぞー、一ノ瀬!」
嬉しそうに声を上げたのは……、
いつの間にか、フロアで羅衣を見守る…高梁。
「………。高梁くん…。」
羅衣は、高梁に向かって…ニカッと笑いかけた。
「……………。」
そんな二人のやりとりを……
民子は、複雑な表情を浮かべたまま…見ていた。


