「ちょっと、大変!星川のテニスの準決勝の相手…王子だって!」
「え、マジマジ?」
女子の面々は……体育館でそう騒ぎ立てていた。
「…………。」
耳に届いているものの、聞かぬフリをしているのは……
一ノ瀬羅衣である。
「次、いよいよウチらの出番だね。」
一応話題を振ってみるが……。
「まだ時間あるし、いけそうじゃない?!」
「見に行っちゃう?」
……聞いたもんじゃあない。
「……羅衣、ちょっとウチら王子の応援に行ってくるわ。」
「……。う、うん。行ってらっしゃ~い!」
手をひらつかせて、彼女らを見送っていると……。
背後から、ガシっと肩を掴まれる。
「羅衣は行かないの?」
「……もうすぐ出番だし…。誰がここで見てないと。」
「まだこの試合始まったばっかだけどね?」
「…………。」
「かわいそーに、星川……。誰にも応援して貰えないだなんて。」
「…………。じゃあ…、たみちゃん行って来ていいよ?」
「…………。いや、私別に星川と親しくないし。」
「私はもっと親しくないけど。」
「「……………。」」
言い合いは、堂々巡りではあるが……、
「男女総合優勝目指して燃えてたのは誰?」
「私。」
「なら……、さっさと言って来なさ~い!!」
どうやら、民子の方が一枚上手。
訳もわからぬまま、羅衣は…しぶしぶとテニスコートに向かうことになる。
「………。私は…、羅衣の味方してるだけだもん。」
民子は何食わぬ顔して…
その場に留まるのであった。


