一気に…体勢は逆転。
さっきまで優位に立っていたはずの民子も……ついには、たじたじとなって。
「……つまり……何が言いたいワケ?」
顔を引き攣らせる。
「うん、だから……。最終報告を。」
「……は?」
「アンタの勘の良さは…厄介。だから、はっきり言っておくけど……。」
「な、なによ……」
「絵里や高梁がどういう風に出てくるかは…知らない。けど、俺は俺なりのやり方で…あいつを振り向かせるから…」
「…………!」
「だから、余計なこと……するなよ。手だし無用。」
「…………。……ハ?」
「多分アイツは、アンタの言葉を…一番間に受ける。絶対の信頼を置いてるからな。」
「……………。」
「アンタのおかげで…目ェ覚めた。だから…、宣戦布告。一番のライバルは…中村民子、アンタだと思う。」
「………ちょっ…、なにその結論……。」
「釘、刺しとこーと思って。俺、やっぱり好きらしい、一ノ瀬羅衣が。だから…、大丈夫。」
「……?何が大丈夫なの…?」
「何あっても、首つっこまないで安心して見守ってね、たみちゃん♪」
「…………!!!」
「……じゃあ、色々情報ありがとう。話は…それだけ。」
渡はヨイショ、と立ち上がると……
ニコリとひとつ妖艶な笑みを残して…
民子の側を離れていく。
「……ちょっと!」
民子が…その背中に叫ぶ。
「私は……羅衣の味方なの。悪いけど、協力はできない!」
渡は前を向いたまま、ピタリと足を止める。
「…羅衣の気持ち無視するようなことしたら……遠慮なく邪魔するから!」
「………。……いいよ、それで。」
「………!」
「俺も、アイツんとこもう傷つけたくないから…見張ってて。」
「…………。」
「それじゃ。」
渡のどこに余裕があるのか……、
その後ろ姿は、あたりにも飄々としていて。
民子は…返す言葉が見当たらなかった。
「……遅いっつーの、全く……。」
ただ、ひとつ……
安堵の息がこぼれたのだった。


