「俺も、多分あいつも…軽い気持ちだった。一種のゲームみたいな感覚で……。一ノ瀬羅衣をちゃんと知らなくて、なのに…始めたことだ。」
「………。誰のこと…言ってるの?」
「勘がいい中村なら、ここまで言ったら…解るんじゃないか?…なんでだろうな……。俺も、あいつも……、違う形で一ノ瀬に会って。あいつをちゃんと知って……。それで、今頃後悔なんて…してるんだから。」
「………その人って、もしかして……。高梁くん……?」
「………うん。」
渡は目を伏せて……
民子の、次の言葉を待つ。
果して。
驚くのか、
怒るのか、
軽蔑するのか……。
「………で?」
民子の口から出たのは…
渡には予想していなかった答えだった。
「…だから…貴方はどうしたいの?」
「…………。」
「…誰が…悪いんだろうね、これって。羅衣を知らないうちに…告白してきた高梁くんかな。それとも…友達を優先して彼をこっぴどく振った羅衣の方かな。全部を知って…その上で羅衣を騙した渡くん?…そのくせ、本当は羅衣が好きで。高梁くんとの仲を危惧してみたり……私に、こんな話をしてみる。貴方の本心は…どこにあるの?」
「…………。」
「どこかで…、自分も被害者だと思ってない?私は…、高梁くんは、ちゃんと羅衣に…全てを話すと思うよ。でなきゃあ、好きだなんて…言えないもん。一度振られた相手に…なかなか言えるもんじゃないし…、嘘は…いずれ暴かれる。貴方も羅衣が大切だって思うなら……、私に頼ってないで、自分で何とかしたらいいじゃない。守ってやったらいいじゃない。遠慮して…、羅衣が傷つくようなことがあったら…それこそ、許さない。」
「……怖…。」
「…おいっ。どこまで人を馬鹿にするかなあ……?」
「……してない。ただ、そーやってアンタが側にいてくれたから……。あいつはまだどっかで、人を信じようとできるんだなって。アンタもあいつも……人の為に一生懸命になれる。それってちょっとカッコイイ。」
「………!!!」
民子は…顔を真っ赤にし、イケメンの言葉に…、くらあっと目眩を起こす。
「……なんて……、言ってみたらどういう反応するのか面白そーだから言ってみた。」
「……な、ななな……!」


