妖艶な笑みをうかべて…、彼の前から姿を消した…絵美。
「…………。」
渡は、近くの壁を思わず蹴り飛ばし。
「…くそ…っ。」
苛立ちを…現わにしていた。
渡自身…、ギリギリの所で堪えていた部分が……あった。
高梁の…存在。
羅衣に告白されたその時に……、
渡は、羅衣に全てを打ち明けようかとも…思った。
自制心を働かせ、それを、我慢したのは……
高梁の為に、
そして、何よりも……
羅衣の為でもあったのだ。
「……させるかよ……。」
他の誰かに…それを無駄になど…されたくはない。
自分が蒔いた種だからこそ、
自分が傷をつけてきたからこそ、
彼女を守れるのも……、
そう、
彼だけだ。


