「アンタがこの前振った中村民子だって…生まれてこの方初めての告白だったんだから!」
「………。」
「『無理』だなんて、まるでその人を全部否定するかのような言い方は良くない。せめて…ちゃんと理由を言ったらどうなの?!」
「……………。」
「…なんとか言いなさい、このスケコマシ!!顔がいいからって調子づいてじゃねーよ!」
……と、そこまで言って。
羅衣は…ふと我に返った。
相手は王子と呼ばれる人気者。
いくら必死になっていたとて…、体裁の悪いのは完全にこちらの方だったから。
なぜなら、明らかに周囲の生徒達は……
彼女を『イタイ女』として同情の念を送っていたからだ。
…告白した訳でも、振られた訳でもないのに。
「………。面倒くさい。特にアンタみたいな女は。」
「……は?」
「それで満足?」
怒っている訳でもなく、蔑むでもなく、かといって哀れむ訳でもなくて…。
羅衣の方へと振り返り、ただ、淡々とそう放った言葉は……
きっと本心以外の何でもない。
それくらい、揺らぐことのない瞳は…羅衣の視線から逃れず真っ直ぐに見返していた。
「……ちょっと。」
「……え?」
唐突に、呼ばれて…、羅衣は心臓が跳びはねる。
「どうでもいいけど。アンタ、人のお節介する前に自分の性癖直したら?俺じゃなくても、だいぶ引く。」
「……………。」
「………ストーカーもヤバイだろ。」
「……………。」
「……じゃ。」
「………………………。」
結局の所……。
鼻を明かす所か、誤解はハッキリと色濃く彼の中へと刻まれていて。
「…………。痴女…、返上しなくちゃ……。」
本来の目的を忘れた羅衣は、
王子こと…渡蒼生に翻弄されて、
胸にもやもやとした感情を…抱く結果に。
そう、すっかりと。
敗北感に…苛まれてしまったのだった。


