高梁の言葉通りに…。
しばらくすると、タオルを頭に被った渡が…そこに、姿を現した。
「待ってたよ、蒼生。」
絵美がにっこりと…微笑む。
「…………。」
渡は無言のまま、彼女の脇を通り過ぎようとするけれど……。
「もう少し早く来てたら、面白いものが見れたのに。」
絵美のそのひと言で…、ピタリ、と足を止めた。
「羅衣ちゃんと高梁くん、いい感じなんだね。…びっくりした。」
「………。何が言いたい?」
「…別に。ただ、計算外のことって…あるんだなあって。一ノ瀬さんはいーよね、何にも知らなくて。」
「………絵美…?」
「蒼生、一ノ瀬さんを…振ったの?」
「…………。」
「ちゃあんと傷ついた顔してたよ。納得してたみたいだけど。」
「……。絵美には…、関係ない。」
「…あるよ。すごく…、ある。」
「……………。」
「私は、まだ納得できてない。裏切ったのは私の方かもしれないけど…、貴方は何ひとつ責めなかったね。それって…、無関心だったから?便利な道具をひとつ無くしたっていう…その程度?」
「……。絵美が先に、俺を利用したじゃん。」
「………!」
「お互い様じゃないの?」
「…………。」
「他の男を選んだのは…絵美自身なんだから、今更蒸し返して何になるの?」
「……それは…、蒼生がちゃんと私を好きになってくれなかったからで……!」
「……そういう関係を望んでたのは…そっちじゃん。」
「………!…最初は確かに…そのつもりだった。でも、一緒にいて、蒼生を知って……」
「……でも、もう終わったことだ。」
「…………じゃあ…、羅衣ちゃんは…?」
「…は?」
「女が面倒くさいから…、蒼生は私の条件を飲んだ。盾にするには、ちょうどよかったもんね。でも…、彼女は違う。賭けの対象だからって近づいた?そんなことしなくたって、貴方にしたら簡単なことでしょう?相手を惚れさせることなんて。」
「…あいつは…、手強い。生半可にいったところで…ひっかからない。」
「…だから、あんなに噂になるくらいに近づいたの?」
「…そう。」


