マットの上、
両足をしっかりとそこに貼付けたまま…、
後方へと、上体を反らしていく。
両手がマットに付くと、
『ピタッ』
そのまま動きを静止して…
羅衣は、反対側のコートを見つめていた。
「…………。」
目に入ってくる、沢山の数字……。
バスケ部が身にまとう、ユニフォーム。
「……。…あいつだけ…。」
背番号…、8。
渡 蒼生……。
例え羅衣がひっくり返ろうが、唯一カタチを変えない…数字。
「……ちぐはぐしてる。嫌味か…?」
「スキあり。」
お腹にとんっと重力がかかって。
彼女はその場で…ペチャンコになる。
「……何してんの、部長。早くタンブリングの練習に移りたいんだけどなあ…。」
「………。あら…、失礼。」
マキはちらっと羅衣の視線を追って、小さく…息を吐いた。
「…で?返事はしたの?」
「………?…え?」
「告白されたんでしょ、高梁くんに。」
「………!!何故知って…。」
「中村さんから聞いたもん。」
「た、たみちゃん…!」
「……。羅衣を見ててやってって言われたんだよね。」
「…………。」
「………てか、今一体誰を見てたんだか。」
「………………。」
「……高梁くんもお相手が悪かったかしらね。」
「…………………。」
「てか…、アンタも相手が悪かったかもね。」
「……え?」
「王子の周りには…女がいっぱい。それに、最近毎日じゃん?」
「…何が?」
「ギャラリーの中に…、姫がいんのよ。」
「は?姫?」
「田之倉絵美。ウチのクラスの男どもも騒いでる…美少女が。」
「………!」
羅衣は……、恐る恐る、顔を上げて。
ギャラリーを…見上げる。
「……………。」
一体いつから…、ここに来るようになっていたのだろう。
凄い形相で、こちらを……
羅衣を、見下げている。
「……強力なライバルでしょ?」
「………違う。」
「へ?」
「違うよ、マキ。」
「………?」


