次に意識を取り戻した時には……、
彼女は、ベッドの上にいた。
「…………?」
見上げる天井に違和感を覚え、まだ寝ぼけなまこで…視線をずらす。
カーテンで仕切られた…空間。
充満する…、消毒液の匂い。
「………?…保健…室?」
途端に、そのカーテンが僅かに開かれて……。
「…目、覚めたね。」
養護教員が、ひょっこりと顔を出す。
「………あの…?」
彼女はまだ状況を…掴めてはいない様子。
「……高い熱があったのよ、アナタ。廊下で倒れたそうよ?」
先生の指摘に、しばし記憶の回路を辿っていくが……、
……最後に見た光景は、渡の…後ろ姿。
そこからの記憶が…
全く、ない。
ゆっくりと身体を起こし、ベッドに座った状態になると…、
左手に、ひやりと何か冷たいものが…触れた。
「…………?」
ペットボトルの…、ポ〇リ…。
「………あの、これ…?」
「あら?いつの間に…?」
「……。誰かここに…来たんですか?」
「倒れたアナタをここに連れて来たのは高梁くんだったけど…、授業もあったしすぐに教室に戻らせたからなぁ…。私の留守中にでも、彼が来たのかしら。」
「……そう…ですか。」
タカハシが、ここまで……。
だけど………。
「……………。」
羅衣はポカリを手にすると、じっと…それを見つめた。
『……。顔、赤い。』
そう指摘していた…、渡。
顔が妙に熱かったのは、熱があったから。
ひょっとしたら……、
「……気づいてた…?」
確信がある訳じゃあない。
このペットボトルは、タカハシが持ってきたのか、はたまた以前羅衣がそうしたように…民子が置いてくれたのかもしれない。
それでも……、
なんとなく、違う気がする。
感覚的なものなのか、野生の勘とでも言おうか、
……願望…なのか。
「…………ワタリ……?」
彼に振られた女は、皆…口を揃えて言うのだ。
彼は……「優しい」、と。


