「…………。」
羅衣の精一杯の…憎まれ口にも、渡は一切表情を変えることは…ない。
「………。じゃあ、邪魔して悪かったな。…タカハシ、早く行けよ?」
何故かバシッとタカハシの頭を…はたく。
「…いってー…、何だよッ。」
「……そこに頭があったから。」
「なんっじゃそりゃ。」
「…ちょうどいい高さ。」
「おいコラっ。」
渡はタカハシに向かって笑いかけると…、そのまま、くるりと踵を返す。
そんな、二人がじゃれ合う姿を…、
それから、去っていく渡の背中を……
羅衣はぼうっと…
そう……、
ぼうっと見つめていたけれど。
次第に…その景色はゆらゆらと揺れて、
霞んで………
目の前が………
真っ暗になっていく。
遠退く意識の中で、
身体を揺すられる感覚を感じながらー…、
「……一ノ瀬っっ?!」
タカハシの声を………
聞いた気がした。


