「あ、いた。タカハシー!」
タカハシの名が…、廊下の奥の方から呼ばれた。
「……。…なんだ~?」
「担任が探してた!」
「…マジか。」
羅衣の背中側で繰り広げられる…会話。
彼女は条件反射であるかのように、思わず…振り返った。
声で判ったハズなのに。
理性を働かせる余裕も…
ないのか?
その、お相手と、羅衣の視線とが……
バッチリと、絡み合う。
「……ワタリ……。」
ちょっと会っていないだけなのに…
随分と久しい気がした。
「…………。なんだ、アンタか。」
言葉を失う羅衣に代わって……ワタリがいつものトーンで…
話し掛けてくる。
そう、なにひとつ、これまでとは変わらぬままにー……。
「……。顔、赤い。」
渡にアッサリと指摘された彼女は…、手で顔を覆った。
なるほど……、確かに、熱い。
それよりも、
なんという構図であろうか。
ワタリと、タカハシと、自分………。
けれど、慌てているのは…あくまでも彼女だけで、他二人に…気遣う要素もないくらい、至って普通であった。
今まで通りになんてできないと、
無理があると、
そう…言っていたハズなのに。
「『なんだ』って…、失礼なんだけど。ごめんなさいね~?うっかりアンタの視界に入っちゃって。」


