自分を見ろ、とタカハシは言う。
眉をさげて、
困ったかのように…
笑顔を作る。
人の本質を見抜こうだなんて、
ましてや男という生き物と向き合おうだなんて、
今まで、到底思えなかったけれど……、
彼が、タカハシが、
好きで嘘をついたのではないってことは……
その、真っ直ぐな瞳から、ひしひしと伝わってくる。
悪意はあったのかもしれない。
でも、芯の部分では…
自分に正直なだけなのかもしれない。
もし、そうならば……
彼女は、やはりタカハシを……
ちゃんと見てこなかった、ということだ。
なら、誰を見てきたのか……?
そんなことは……
わかりきっているのだ。
そう……、
後ろ姿にさえ、ひきつけられてしまう。
全ての景色を奪うかのようにして、飛び込んで来るあの大きな背中……。
渡蒼生以外には、いないのだ……。
「……今すぐ返事とか、いらないから。」
「返事?」
「だって、今告白したでしょ、俺。」
「……エ。」
「……………。」
「……………あの…」
返事などとは、思いつきもしなかった。
「いい、何も言わなくて。つーか、傷つくなぁ…、その反応。全く俺とどうなろうだなんて、考えもしてないってことでしょ?」
「………ごめ…」
「ホラ、そういうもんなんだって。」
「…え?」
「おあいこだね。」
「…………。」
「お互い様。こうまで手の内バレたんだから、少しくらい狡くないと…お互いに、自分の思うようにらならないよ。」
「…………。」
「もっと言うなら、そこにつけこんで…駆け引きしないと。」
「駆け引き……。」
「ん。俺は、一ノ瀬と付き合いたいから、自分の狡いところがバレても…それでいいって思う。これは…、予告。正々堂々ぶつかってくから。その上で…返事をちょうだい。」
「………。」
「一ノ瀬は…、きっと好きになるよ。」


