真っ暗な闇に……
突き落とされていくようだった。
出会いは最悪で。
だけど、その全てが嘘だなんて到底思えなくて……。
それでも、冷たい瞳で見下ろす渡に。
真相を問おうだなんて…
馬鹿げている気がした。
また、いとも簡単に…
騙されてしまうだろうから。
「…どの道…、俺は降りるつもりだった。もう賭ける意味もなくなったし、これ以上は…アンタも気の毒かなって。」
「…………。」
「……いい思い出んなっただろ?これを機に少しくらい男の怖さを知れたじゃん。」
「…………。」
「タカハシは…、そういんじゃない。それに気づけただけでも…成長だな。」
「……もう…いい。これ以上…聞かなくても。」
羅衣は顔を上げて。
真顔のまま、抑揚つけずに…話し出す。
「…………。」
「……最悪じゃん、アンタ。」
「うん。」
「いい奴だって…、信じようとした私が馬鹿でした。」
「……うん。」
「…でも…人のこと言えないな。」
「え。」
「さっきの告白は…嘘。」
「…は?」
「アンタと私じゃあどう考えてもおかしな組み合わせでしょ。なのに…あんなに甘い感じになっちゃったから…つい。」
「………。」
「…嘘、だよ。だから、別に傷なんてつかない。アンタが変な負い目を感じることなんて…ないから?」
「…………。」
「…まあ、確かにアンタを信用しつつもあったけど……。アンタも女をめんどくさいって言いながら可愛い彼女いたんだしね。……騙くらかしもここまで。」
心は……
泣いていた。
「おかげでタカハシくんみたいな人とも知り合えたし。そろそろ、まともな恋愛とか…できそう。」
「………。…そう。良かったじゃん。」
「だから、ワタリ……。そんな顔…しないで。」
「………?」
「アンタのことなんてよく知らないけどさ。辛そうにされたら…恨みきれないじゃない。」
「…………。」
「……嫌いには…なれないよ。」


