恋するplants



 肉まんのような頬をした山下くんがにやりと笑った。


 何か見透かされたようで、僕は何も言えなかった。


 「クリスマスに予定のない人~、カラオケ行く人~?」


 輪の中で誰かが叫んだ。


 クリスマスは家族で過ごすという料理の上手な彼女を持つ山下くんを筆頭に6、7人が挙手した。


 「秋川は?」


 と山下くんに訊ねられ、これから用があるんだと誘いを断った。


 「よかったら、連絡してくれ。今度、飲みに行こう。俺、実は秋川とじっくり話してみたいって思ってたんだ」


 別れ際、山下くんにそう言われた。


 必ず、と約束して、街の中に消えて行く集団を見送った。




  ★



 エレベーターからぽんっと勢いよく飛び出すと、はぁと息を吐いた。


 白い靄が闇に消えて行った。


 ため息を1つ吐いて、駅へと向かって歩き出す、小さな背中をぽんと叩いた。


 「か、楓くん」


 振り向いたイチゴちゃんは本当に驚いた顔をしていた。


 ぽかんと口を開けて、僕を見ている。