目敏く、彼に気付いた集団の中の1人が声を上げたところで周りが騒ぎ出した。
池見先生が輪の中に茉雪を見つけて、手を振ると、茉雪は彼の元に駆け寄った。
え?嘘?2人ってそういう関係なの?ざわめきが起こり、茉雪はみんなを振り返って、メールするねと笑顔で言うと池見先生のエスコートのもと車の中へ入っていた。
こうして、王子様はカッコよく、お姫様をさらって行ったのでした。
「池見先生が彼氏って羨ましい~」
「ますますイケメンになってた~」
ね~と頷き合うガールトークは止まらない。
「俺、茉雪さんは秋川と付き合ってるって思ってたけど・・・」
輪の中でそう口にしたのは山下くんだった。
山下くんも来てたんだ。
茉雪のことが好きだったのに、畑中椿にそそのかされて、付き合って、結局振られた彼だ。
言ってみれば彼も被害者の1人だ。
そんな彼もパーティーに呼ぶなんて、ますます畑中椿のことが解らなくなってきた。
「まさか、違うよ。僕らは親友なんだ」
自分で言って、ちくりと胸が痛んだけど、親友って言葉が落ち着く感じがする。
「親友ね・・・」

