イチゴちゃんのおっちょこちょいぶりは知っているけれど、今回は彼女のせいではない。
招待客の1人が電話をしながらぶつかってきたのだ。
マネジャーと名乗る男性に化粧室を案内され、クリーニング代にとお金を渡された。
シャンパンがかかったのは幸いジャケットだけだったので、助かった。
ジャケットを洗面台で濯いで、化粧室を出ると、従業員ようの廊下でさっきのマネジャーがイチゴちゃんを叱責していた。
「何故、周りを見ないんだ」「いつもケアレスミスばっかりして」くどくどと文句を言うマネージャーにイチゴちゃんはひたすら謝っていた。
何だか見てられなくなって、「彼女が悪いんじゃないんです」と助け舟を出した。
叱責しているところを客に見られ気まずい思いをしたのかマネージャーは失礼しましたとそそくさとその場を後にした。
イチゴちゃんは瞳に涙を溜めて、会場へと歩き出した。
★
エレベーターを出ると通りに目の前に赤いミニ○ーパーが止まっていた。
車の主は僕たちに気付くと、運転席から顔を出し、車の前方を回って助手席のドアを開けた。
ポーズがいちいち様になっている。
「嘘、池見先生?」
「きゃ~」

