「ごめんな、秋川くん。君の気持ちは痛いくらい解ってたのに・・・」
池見先生の言葉がずきんと心に突き刺さる。
知ってたんだ。
僕の気持ち。
痛む心を宥めながら、池見先生を振り返った。
「僕、相手が池見先生で良かったって思ってるんです。茉雪の隣にいるけれど、あんな幸せそうな顔するのって初めてかもしれません。僕には彼女をあんな表情にすること出来なかったって思います。時間が経てば今の気持ちも風化するって思うです。だから、このまま彼女とは友達でいさせて下さい」
「もちろんだよ」
そう言って僕らは笑いあった。
池見先生で良かった、それは本心だ。
失恋の傷は痛いけど、きっと時間が解決してくれる。
玄関先で手を振る池見先生にクラクションで返事をすると、海岸通りを店へと向かった。
★
「わらびに会ったんだ?」
「うん、昨日の夕方に出発するって言ってた。よもぎくんの知り合いのペンションに泊まるんだって。いいよな~」

