恋するplants



 「これからバイトって思うと気が重いなぁ」


 「僕も帰ったら、店の配達の手伝いだよ」


 僕らは顔を見合わせるとフフと笑い合った。


 「明日の夜は結婚パーティーが入ってるんだよね?」


 「え?何で知ってるの?私、楓くんに言ったっけ?」


 目を丸くして驚くイチゴちゃんが可笑しくて仕方なかった。


 何でだろうねと首を傾げた。


 秘密はまだ明日まで隠しておくつもりだ。



  
  ★



 
 イブの夜からクリスマス当日の午前中は目の回る忙しさだった。


 兄が友達に借りたという配達用のバイク(宅配ピザ屋が乗ってるやつ)に跨り、店とお客さんの家を行ったり来たり、来店も増え始めてんやわんやの大騒ぎだった。


 「楓、これで最後で、上がっていいから」


 店のカラーである赤いケーキボックスを受け取ると忙しなく動く兄は厨房へと戻って行った。


 メットを被り、バイクを発進させる。


 届け先の名前には見覚えがあった。


 「イケミレン」伝票にはそう書かれている。