僕もそろそろ潮時なのかもしれない。
茉雪の傍でずっと彼女を見ていたいなんて、僕の一方的な思いだったんだ。
茉雪は過去の恋愛の傷に苦しみながら、新しい恋愛に向かっている。
本人は気付いているかは怪しいけど、相手が池見先生なら彼女も幸せになれるだろう。
もっと素直にお互い歩み寄ればいいのに・・・店内にぶら下がる裸電球を見つめながらため息をついた。
僕も戦線離脱だ。
★
「パンケーキの作り方を教えろだぁ?」
深夜、お風呂上りの兄に思い切ってお願いしてみた。
クリスマス間近、毎日のように仕込みに追われて多忙なのは知っていた。
けれど、イチゴちゃんのクリスマスにパンケーキが食べたいという願いを叶えるためにはどうしても兄の協力が必要だった。
「何故、パンケーキ?クリスマスケーキじゃなくていいの?」
訝しげに首を捻る兄に、頭を下げた。
結局、クリスマス前最後の定休日である明日に、仕込みの傍ら、作り方を教えて貰えることになった。
材料は店のものを使ってもいい。
ただし、24日、イブの夜の配達と25日、午前中のケーキの配達を手伝うことで手を打った。

