「ねぇ、私たちこのまま、付き合ってみようか?」
茉雪の何気なく言った一言にカチンときた。
僕のこと男としてみたことないくせに・・・そんな気持ちないくせに・・・池見先生のことが好きなくせに・・・そのことに気付いてな
い茉雪はバカだ。
そして、そんな茉雪のことがずっと好きな自分もバカだ。
「こんな思いをするなら、今日、ここへ来なければよかったよ」
茉雪を傷つけるには十分すぎる捨てゼリフを吐いて、遊園地を後にした。
家に着く頃には、怒りは自己嫌悪に変わっていた。
何で茉雪にあんなこと言ってしまったんだろう。
強そうに見えて、弱い。
それを解ってあげられるのは僕だけだったのに・・・
「ただいま」
リビングで映画鑑賞をしていた両親に声をかけた。
「楓にお客さん来てるって、紅葉が言ってたわよ。お店覗いてみて」
母さんに言われ、店を覗いてみた。
丁度、レジの前にいる兄に声をかける。
「楓の携帯鳴らしたんだけど、全然でないから」
茉雪からの電話はずっと鳴ってて、億劫で電源を切ってしまってたんだ・・・どうやらイチゴちゃんが寄ってくれたらしい。

