「本当は長女だからいちこなんですけど、果物のイチゴに響きが似てるからってお母さんが付けたんです。妹なんてちえりって言うんですよ」
「ちえり・・・あぁ、チェリー、サクランボのことか」
女の子らしくて可愛い名前だと思う。
「ところで楓さんの誕生日っていつなんですか?・・・別に変な意味はないんですよ。私の誕生日を祝ってもらったからそのお返しがしたくて・・・」
「12月7日だけど、別にいちこさんが気を遣うことないですよ。それに、僕に敬語使わないで下さい。僕、年下だし・・・」
「え!?そうなの!?」
彼女は驚いたらしく目を丸くした。
僕が老けているってことだろうか?軽く傷つく。
「今、19歳で1ヶ月後には20歳になります」
「そうなんだ。私なんかよりしっかりしてるから、てっきり年上かと・・・私にも敬語使わなくていいよ。童顔だからきっと楓くんと一緒にいても年下に見えるだろうし」
「じゃあ、そうします。・・・あ、そうするね。これからはイチゴちゃんって呼ぶことにするよ」
★
イチゴちゃんと話ていたら、いつの間にか辺りは暗くなっていた。
気付けば、カフェエリアの客も僕たちだけで、ショーケースの中のケーキも数えられる程に無くなっていた。
「ごめん、すっかり暗くなっちゃったね」

