「何のケーキを食べたの?」
「Un Joli amant 特製、フルーツロールケーキ。ほっんとにおいしかったです!」
彼女は語尾に力を込めて感想を述べた。
「家族にもお土産買いました。妹には、チェリータルトで、お母さんにもフルーツロールケーキ、お父さんにはパイシュー」
訊いていないことまでぺらぺらと楽しそうに話す彼女を見て、元気になったんだなと安心した。
「そういえば、私、恩人の名前も訊いてなかったのに気付いたんです。お兄さんの名前を教えて下さい」
「恩人なんて・・・あぁ、僕の名前ですか?秋川楓です」
「あきかわかえで・・・ステキな名前ですね。私はいちこって言います。滝本いちこ」
滝本いちこ、イチゴに響きが似ている。
揃えられた前髪の上に緩く結んであるおだんご。
小柄で女の子らしいフリルのついたワンピース。
にこにこ笑いながら答える彼女にぴったりの名前だと思った。
イチゴちゃん。
「イチゴ・・・」
ぽつりと呟いてしまった。
彼女はよく言われますとにこやかに返した。

