そんな風に思われてたなんて知らなかった。


 私は蓮の優しさに甘えて、いつの間にか蓮にとって特別な存在になりたかったのに。


 蓮は何も言わずに俯いた。


 涙が頬を伝って私の腕を掴む蓮の手の甲に落ちた。


 蓮ははっとして顔を上げた。


 「・・・私は、ホントは秋川と付き合ってないの・・・蓮の気を引きたくてついた嘘だったの・・・」


 「知ってる。秋川くんに会った時、彼がそう言ってた」


 「蓮に好きって面と向かって言える百合さんにやきもち妬いてたの・・・でも、蓮にとっては、きっと私も女友達の1人で・・・」


 やばい、いよいよ本気モードになってきてぼろぼろと涙が溢れてきた。


 女友達の1人であることが嫌だった。


 それをここで思い知らされるのも・・・蓮に掴まれていない方の手で溢れてくる涙を拭った。


 大きく息を吸って、吐いた。


 「蓮といるとつらいから、もうこれで会うのは辞めにする」


 そのまま蓮の頬を撫でて、顔を近づけた。


 瞼を閉じて、蓮の荒れた唇に自分の唇を重ねた。


 蓮との最初で最後のキスはワインとタバコと私の流した涙の味がした。


 私の2度目の恋は、また苦い思い出になってしまった。

 
 長いキスの後で唇を離すと蓮はだらりと力が抜け、掴まれた腕が自由になった。


 「さようなら」


 部屋を出る時、振り向いてそう呟いた。


 蓮は項垂れたまま、何も言わなかった。